5ページ目/全7ページ ヘプシュッ! 妙なクシャミをしてサンジは覚醒した。 (寒いな〜〜〜。なんだ??甲板か?) 頭はガンガン痛むし、視界はグルグル廻っているし、板で寝ていたせいで体もギシギシ痛む。 周囲を見回すとうっすらと霧がかかっているのがわかった。 先ほどまでは、綺麗な星空の晴天だったのに、さすがはグランドラインである。 もっと目を凝らして見ると、看板の隅で壁を背もたれにして、座位で眠っているゾロの姿があった。 腕組みして眉間にシワを寄せ岩のように動かないその姿は、仏像に良く似ていた。 (何だ?寝ながら修行中か?良くこの体勢と寒さで熟睡できるよな〜さすが腐れ腹巻だぜ) 変な感心をしたサンジだったが、やはり起こした方が良さそうなのでゾロに声をかけてみた。 「お〜い、クソ剣豪!起きね〜と海にまた蹴り落とすぞ〜〜!オロされて〜のか、こら!」 一緒に攻撃も入れようかと思ったが、誕生日に2度も蹴られるのも不憫だったので止めておいた。 (まあ〜雪の中で寝ても死なね〜男だからな。霧で凍死はね〜だろ) (絶交は、明日っからにしておいてやるぜ!) サンジは自分の上着を脱ぐと、ゾロの身体を覆うようにしてかけてやった。 それから、腕時計に目を走らせた。 (残り30分チョイってトコロか?まあ〜ギリギリだな) サンジはふらつく足取りで厨房へ行くと、それから30分きっかりで戻ったきた。 手には、白い生クリームがたっぷりかかった、直径20センチほどの丸いケーキがあった。 その上には<ハッピーバースデー>と書かれてあった。 サンジはどうしてもゾロに<バースデーケーキ>を作りたかったのだ。 料理人としても、相手に自分の料理を味わってもらえないのは辛い。 それ以上に、サンジが気になった事は、自分がゾロの誕生日をまだ祝っていない事だった。 面と向かって「おめでとう」と言う言葉は、サンジにはとても言えない気がする。 (オレに言われても、奴も嬉しくはね〜だろうしな) 11月11日が後5分で終了する。 「お〜い、ゾロ。コレはてめ〜の分だからな。さっきルフィに食われちまっただろ? 死ぬほど酒好きみたいだからな〜しこたまブランデー効かせてやったぜ。 コレはてめぇ〜にやるから好きにしろ! 食わないで人にやっても、そりぁ〜自由だ。 だが、捨てたりしたら、ぶっ殺すからな!!」 そう言うとケーキをゾロの足元に置き、踵を返し、男部屋に戻ろうと歩き出した。 まるで、宇宙遊泳のようにサンジの身体はユラユラと揺れていた。急速に酔いと眠気が襲う。 ケーキ作りに精神力を使い果たし、酔っ払いサンジは心身とも燃えカスになっていた。 「オレは捨てたりしね〜ぞ?」 そう声が背後ですると、次の瞬間、サンジの右手が強く引っ張られた。 「うわわわわ〜〜〜〜!」 酔ってふらつく足はその動きについていけない。慣性の法則と重力には逆らえず、 サンジは右斜め後ろにバッタリと倒れて行った。 床板にぶち当たる前に反射的にもがいたサンジは、右手と右頬と胸元にグッチャリとした とても嫌な感触を味わった。それは考えたくも無い事実を物語っている。 踏まれた蛙のように腹ばいになっていたサンジが、意を決して起き上がると、予想通り。 サンジが渾身の想いを込めて作ったケーキが、自分の身体の下で押しつぶされていた。 「何してくれるんだよ!てめぇ〜は!」 サンジのヒステリックな叫びは泣き声に近かった。生クリームに塗れた顔やブルーのシャツは 少しコミカルだったが、笑う人間はいないと思われる。 「ああ??お前、上着忘れてるぞ」 |
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